労働安全衛生法で定める「長時間労働者への医師による面接指導」とは?
脳・心臓疾患の発症が長時間労働との関連性が強いとされていることから、労働安全衛生法第66条の8により、事業者には、医師による該当者への面接指導を行うことが義務付けられています。
事業者は長時間労働等の要件に該当する労働者の健康状態を把握し、適切な措置を講じなければなりません。
また、労災認定された自殺事案には長時間労働であったものも多いことから、この面接指導の際には、うつ病等のストレスが関係する精神疾患等の発症を予防するために、メンタルヘルス面にも配慮しましょう。
【対象】
すべての事業場(常時50人未満の労働者を使用する事業場は平成20年4月から適用)
【概要】
事業者は、労働者の週40時間を超える労働が1月当たり100時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められるときは、労働者の申出を受けて、医師による面接指導を行わなければなりません。
(ただし、1か月以内に面接指導を受けた労働者等で、面接指導を受ける必要がないと医師が認めた者を除きます。)
1か月の時間外・休日労働時間数の算定方法
⇒ 1か月の総労働時間数 -(計算期間1か月間の総暦日数/7)× 40
| 1か月の総労働時間数 | = | 労働時間数 (所定労働時間数) |
+ | 延長時間数 (時間外労働時間数) |
+ | 休日労働時間数 |
|---|
※時間の算定は、毎月1回以上、一定の期日を決めて行わなければなりません。
(賃金締切日とする等)
注)東京都労働相談情報センター
http://www.kenkou-hataraku.metro.tokyo.jp/mental/line_care/law/interview.html
労働者の申出については、労働安全衛生法施行規則第52条の3において、下記のように定められています。
- 面接指導は、労働者の申出により行うものとする。
- 申出は、遅滞なく、行うものとする。
- 事業者は、労働者から申出があったときは、遅滞なく、面接指導を行わなければならない。
申出ルール策定の重要性
事業主は、面接が必要な労働者が確実に医師面接を申出られるような環境・体制を整備することが重要です。
例えば、申出のルールを策定することなどが挙げられます。
ルールの例
- 過重労働者全員に「疲労蓄積度チェック」を実施させ、該当する労働者全員を申出が あったものとみなし、自動的に面接対象者とする
- 過重労働者全員に電子メールで、毎月産業医面接を受けるように告知する
- 過重労働者で、かつ、面接を受けていない人のリストを作成し、未受診者がいなくなるよう、定期的に通知を送る
- 時間外労働の申請をする際に、時間外労働時間の累計によってアラートが出るように 設定する
面接の実施について
面接指導を実施する医師としては、産業医、産業医の要件を備えた医師等、労働者の健康管理を行える医師が望ましいとされています。
また、面接指導の費用について、事業者が負担すべきものと考えてください。
下記は、実際の面接で使用される問診表と、自己チェック表です。
- 長時間労働者への面接指導チェックリスト【医師用】(H20.8)
P1~P8をご参照ください。- 長時間労働者への面接指導マニュアル【医師用】−チェックリストの使い方−(H20.8)
P9~P13をご参照ください。注)産業医学振興財団
http://www.zsisz.or.jp/insurance/topics/checklist.html
事後措置について
事業者が、面接後にも実施しなければならないことがあります。
下記の事項にも配慮しましょう。
- 面接指導を実施した労働者の健康保持のため、必要な措置について、医師の意見を聴かなければなりません。
- 医師の意見に基づいて事業主が実施すべき措置としてはたとえば、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置が挙げられます。
- 面接指導の結果に基づき、当該面接指導の結果の記録を作成して、これを5年間保存しなければなりません。
健康診断と事後指導
従業員の健康診断及びその事後指導は使用者の責任で行わなくてはなりません。【安衛法66条】
対象となる方は、正社員及び1年以上の雇用の見込みがあり、1週間の労働時間が正社員の4分の3以上の従業員の方です。
■主な健康診断の種類
| 雇入れ時の健康診断 【安衛則第43条】 |
常時使用する労働者を雇い入れる際に実施。 |
|---|---|
| 定期健康診断 【安衛則第44条】 |
常時使用する労働者に1年以内ごとに1回実施。 |
| 特定業務従事者の健康診断 【安衛則45条】 |
特定業務(深夜、高温、低温、粉塵飛散、高圧などの状況下での業務)に従事する労働者に配置換えの際及び6か月以内ごとに実施。 |
尚、50人を超える労働者を使用する事業者は、定期健康診断を行ったときは、遅滞なく定期健康診断結果報告書を労働基準監督署に提出しなければなりません。【安衛則52条】
※全ての健康診断で健康診断結果を労働者へ通知するとともに健康診断個人票を作成して5年間保存しなければなりません。
深夜業に従事する労働者(週1回もしくは月4回以上深夜時間22~翌5時の時間帯にかかる労働を行う方)は年2回健康診断を行わなくてはなりませんのでご注意ください。
事業者は健康診断の結果に基づき、当該労働者の健康を保持するために必要な措置について、医師又は歯科医師の意見を聴き、その必要があると認めるときは、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講ずるほか、衛生委員会等へ報告し適切な措置を講じなければなりません。【安衛法66条の4、5】
また、特に健康の保持に努める必要があると認める労働者に対し、医師又は保健師による保健指導を行うように努めなければなりません。【安衛法66条の7】
50人以上の事業場が対象
産業医の選任
常時使用する労働者数が50人以上の事業場は1人、3000人以上の事業場は2人の産業医を、また、1000人以上の事業場(深夜業を含む事業など一定の業種については500人以上)については専属の産業医を、選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任しなければなりません。【安衛法13条、安衛則14、15条】
また、産業医は、少なくとも毎月一回作業場等を巡視し、作業方法又は衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければなりません。【安衛則15条】
その他、産業医の行うべき業務としては、(安全)衛生委員会への出席、健康診断の事後指導や各種面談指導、作業環境管理、労働衛生教育、健康教育・健康相談などがあり、これらの業務を訪問時に企業担当者と相談しながら必要に応じて行っていきます。
尚、産業医は労働者の健康を確保するため必要があると認めるときは、事業者に対して、労働者の健康管理などに対して必要な勧告をすることができます。
衛生管理者の選任
職場において労働者の健康障害を防止するため、常時50人以上の労働者を使用する事業者はその事業場専属の衛生管理者を選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任しなければなりません。【安衛則第7条】
選任すべき人数は事業場の労働者数により、以下の人数になります。
| 50人以上~200人以下 | 1人以上 |
|---|---|
| 200人超~500人以下 | 2人以上 |
| 500人超~1,000人以下 | 3人以上 |
| 1,000人超~2,000人以下 | 4人以上 |
| 2,000人超~3,000人以下 | 5人以上 |
| 3,000人超 | 6人以上 |
常時1000人を超える労働者を使用する事業場、または常時500人を超える労働者を使用し、かつ法定の有害業務に常時30人以上の労働者を従事させている事業場では、衛生管理者のうち、少なくとも一人を専任としなければなりません。
衛生管理者は、労働者の危険・健康障害を防止するための措置や教育、健康診断業務、労災の防止調査や対策等のうち衛生に関する技術的事項の管理を行います。また、衛生管理者は少なくとも毎週1回作業場等を巡視し、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければなりません。
尚、衛生管理者には第一種、第二種の種別があり、第一種は全ての業種で対応が可能ですが第二種では一部対応できない業種があります。
※その他労働者人数・業種により必要な選任義務
| 業種1 | 林業・鉱業・建設業・製造業(木材製品製造業・化学工業・鋼鉄業・金属製品製造業・輸送用機械器具製造業に限ります。)・運輸業(道路貨物運送業・港湾運送業に限ります。)・自動車整備業・機械修理業・清掃業 |
|---|---|
| 業種2 | 製造業(上記のものは除きます。)・運送業(上記のものは除きます。)・電気業・ガス業・熱供給業・水道業・通信業・各種商品卸売業・家具建具じゅう器等卸売業・各種商品小売業・家具建具じゅう器小売業・燃料小売業・旅館業・ゴルフ場業 |
| 総括安全衛生管理者 | 業種1は労働者100人、業種2は労働者300人以上等 |
|---|---|
| 安全管理者 | 業種1・業種2は労働者50人以上 |
| 安全衛生推進者 | 業種1・業種2で労働者10人以上50人未満 |
| 衛生推進者 | 業種1・業種2以外の業種で労働者10人以上50人未満 |
(安全)衛生委員会の実施
事業者は常時50人以上の労働者を使用する事業場ごとに、月1回以上、衛生に関することを調査審議し、事業者に意見を述べるため、衛生委員会を設置しなければなりません。【安衛法18条】
衛生委員会の出席者は、総括安全衛生管理者または事業の実施を総括管理する者(議長)、産業医、衛生管理者、事業場の労働者で衛生に関し経験を有する者およびその他の委員になりますが、総括安全衛生管理者または事業の実施を総括管理する者(議長)以外の委員についてその半数は、労働組合、もしくは労働者の過半数を代表する者の推薦に基づくことが必要です。
委員会の議事について、事業者は遅滞なく概要を労働者に周知するとともに、重要なものを記録し、3年間保存しなければなりません。
尚、上記の業種1では50人以上、業種2では100人以上の事業場では安全委員会(もしくは衛生委員会と合わせ安全衛生委員会)を設置する必要があります。【安衛法17条】
ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等
ストレスチェック制度
平成27年12月より施行のストレスチェック制度は、定期的に労働者のストレスの状況について検査を行い、本人にその結果を通知して自らのストレスの状況について気付きを促し、個人のメンタルヘルス不調のリスクを低減させるとともに、検査結果を集団的に分析し、職場環境の改善につなげる取組です。
プログラム
実施プログラム利用に関する問い合わせ:0120-65-3167
「厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム」ダウンロードサイト労働基準監督署への報告用「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書」を掲載しました。
掲載場所はこちら動画で見るストレスチェック
働く人の「こころの健康」を守るストレスチェック制度が始まります【政府インターネットテレビ】
解説
- ストレスチェック制度簡単導入マニュアル(PDF:1,053KB)
- ストレスチェック制度導入ガイド(PDF:11,027KB)
- 労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル(平成28年4月改訂)(PDF:7,704KB)
- 「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」の改訂ポイント(PDF:75KB)
- ストレスチェック制度説明資料(PDF:1,855KB)
- 数値基準に基づいて「高ストレス者」を選定する方法(PDF:659KB)
- 情報通信機器を用いた面接指導の実施について(PDF:91KB)
- ストレスチェック制度 Q&A(PDF:252KB)
実施ツール
- 職業性ストレス簡易調査票(57項目)(Word:50KB)
- 職業性ストレス簡易調査票(57項目)(英語版)(平成28年6月修正)(PDF:84KB)
- 職業性ストレス簡易調査票(57項目)(英語版)正誤表(PDF:39KB)
4 ※職業性ストレス簡易調査票英語版は、東京大学と富士通ソフトウェアテクノロジーズ社との共同研究により開発されました。開発および信頼性・妥当性の出典は以下になります。
5 Ando E, Kawakami N, Shimazu A, Shimomitsu T, Odagiri Y. Reliability and validity of the English version of the New Brief Job Stress Questionnaire. Presented at the 31st International Conference on Occupational Health, Seoul, Korea, 31 May – 5 June 2015.関連情報
- ストレスチェック制度に関するお問い合わせはこちら
- 助成金(従業員数50人未満の事業場向け)に関するお問い合わせはこちら
- 看護師・精神保健福祉士に対する研修(実施者になるために必要な研修※)に関する情報はこちら [47KB]
※3年以上労働者の健康管理等の業務に従事した経験を有する看護師又は精神保健福祉士は、研修を受けなくても実施者となることができます。
注)厚生労働省HP抜粋
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/
